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「それもそうですが、お時間は?」
「そうだな……」
源三は再び眉を顰めて剣を眺めた後、三郎をじっと見詰めてから答えた。
「4、5日……いや10日かなあ。その間、こいつも預かっていいか?」
三郎は驚いて一郎の顔を見たが、一郎は男に向かって頷いた。
「承知いたしました」
「えっ、一郎!」
そんなの嫌だと抗議しかけた三郎の耳に、一郎は囁いた。
「ここに残って彼に奉仕するか、剣を捨てて帰るか、どちらかだ」
帰るわけにはいかない。三郎は唇を噛みしめて黙った。
「では、よろしくお願いいたします」
一郎が立ち上がって部屋を出ようとすると、娘が茶を持ってやって来た。
「もうお帰りですか? 良かったらお茶を――」
「申し訳ないのですが、我々は飲食を禁じられております。そちらの男、三郎がしばらくここでお世話になりますが、その間食事は与えないで下さい。健康には全く問題がないので、どうぞご心配なく」
「はあ……」
がっかりしたような驚いたような顔で頷いた彼女の脇をすり抜けて、一郎は行ってしまった。
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