第7章 失った輝き

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源三は細い楊子のような道具に中和剤を浸して剣の傷に入り込んだ龍の体液を取り除いて見せた。 「後は明日だな。おまえも風呂入って寝ろ」 「俺独りで続けます。このままじゃ眠れません」 「そうか。でも風呂には入ってこい。服にも毒がついているかもしれないし、花に着替えを出して貰え」 「風呂もいいです。大丈夫ですから」 言うことを聞かず作業を続ける三郎に呆れた源三は、ため息をついて言った。 「おまえの体や着物が溶けるだけなら構わないが、まき散らされては困る。俺がやっとくから、とっとと風呂入って着替えてこい」 道具を奪い取られた三郎が仕方なく部屋を出ると、花がやって来て風呂場に案内してくれた。 「着替えは後でお持ちします。どうぞごゆっくり」 そして三郎は、久しぶりにごく一般的な広さの風呂場に入った。しかしそこに水道口はなく、もちろんシャワーもない。お湯は温泉旅館の風呂のように、直接湯船に注ぎ込み続けている。三郎が手桶で湯を汲んで体を洗い流していると花が着替えを持って来た。 「着替え、ここに置きますね」 「――どうも」 三郎は一応返事をしたが、彼女は風呂の戸を開けた。 「お背中流しましょうか」
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