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「徹夜したのか。どれ見せてみろ」
部屋に入って来た源三は剣を調べて首を振った。
「まだまだ掛かりそうだな。ここを見ろ。まだこの隅に残ってる。全部完全に取り除かないと、次の作業は出来ない」
源三は落胆した三郎の肩を抱いて囁いた。
「少し休んだらどうだ。食事が不要なだけで、睡眠は必要なんだろう?」
「でも剣は溶け続けているんでしょう?」
剣は今もあの龍に苦しめられている。まだ戦い続けている。そう考えると自分だけ休むなんて出来ない。
「そうか。じゃあ気の済むようにしろ。俺はそればかりに構っていられない。どうしても取れない所があったら呼べ」
源三は棚から別の刃物を取り出して研ぎ始めた。彼は時折席を立って部屋から出て行ったが、三郎は休まず作業を続け、また夜になった。
「おまえ、本当に大丈夫なのか?」
「はい」
「華奢なわりにはタフなんだな」
感心したように呟くと、源三は難しい場所を少し手伝ってやった。
「よし、大体取れたぞ。もう安心だから休め」
「いいえ」
「頑固だな。俺はもう寝るぞ」
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