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「俺の着物は?」
「洗いましたよ。はい、どうぞ」
差し出された着物を受け取って着替え始めようとした三郎は、座ったままの花を睨んだ。
「着替えるんですけど」
「ええ。手伝いますよ」
「独りで出来ます!」
フフッと笑って立ち上がった花は、可愛いと囁いて出て行った。
「子供扱いしやがって」
怒って呟きながら急いで着替えると、三郎は作業部屋に行った。
「よう眠り姫、ようやくお目覚めか」
「すいません、俺――ああっ、それ!」
三郎は、黒い机に置かれた自分の剣を見て思わず叫んだ。見違えるように輝いている。
「まだ完成じゃねーよ。これから仕上げだ」
「ありがとうございます。本当にすいません俺、何も手伝わなくて……」
「いいさ。どうせ手伝える仕事はなかったからな」
源三は立ち上がって刃物の並んだ棚に向かい、包丁を一本持って来た。
「おまえ、これ磨いてみろ」
そう言われてもどうしたらいいのかわからない。
躊躇っていると、源三は机の上で剣を動かし始めた。
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