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どうやら机が砥石になるらしい。三郎は源三を真似て包丁を動かしてみた。
「もっとゆっくり、均一に力を掛けろ」
しばらく続けていると、包丁は滑らかに机の上を滑るようになった。反対側も同様に磨くと、包丁は渡された時よりもずっと美しくなった。
「この石、凄いですね」
「これか? そんなに珍しい石じゃねーよ。どんな溶液でも変質しない特殊な石だけどな。おまえ達の城にもあるだろ」
見た事がないと考えていて、三郎は思い出した。臥龍山で見た大きな黒い巨岩。恐らくあれもこの石だ。
「よし、じゃあこれも磨け」
源三はまた別の包丁を渡した。終わったらまた次と繰り返して5本目を仕上げた時、源三は三郎に包丁ではなく、剣を渡した。
「出来たぞ。多分な」
剣は初めて見た時以上に輝いている。三郎は喜んで礼を言った。
「ありがとうございます。でも多分って……」
「元通りかはわからん。特殊な剣だからな。そこの竹林ででも試してみたらどうだ?」
「はい!」
三郎はすぐに出て行こうとしたが、源三に腕を掴まれた。
「おい、その前にやることがあるだろう」
「え……?」
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