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とその時、庭で物音がした。
「ご免下さい」
一声掛けて縁側から入って来た人物の顔を見た三郎は、泣きそうな声で叫んだ。
「五郎!」
三郎は五郎に駆け寄り、背後に隠れた。突然入ってきた大男に、源三は眉を顰めた。
「玄関はあっちだ」
「失礼しました。三郎の声が聞こえたものですから。丹治五郎と申します。一郎の使いで参りました」
五郎は笑顔でそう言うと、手にした大きな荷物を差し出した。
「どうぞこちらをお納め下さい」
剣の打ち直しの報酬として差し出された品を、源三は眉を顰めたまま受け取った。
「10日って言った筈だが。なんで今日だってわかった?」
「私は存じませんが、一郎にはわかるようです。見事に打ち直して頂いて大変感謝していると申しておりました」
源三はフンと笑って五郎の陰に隠れている三郎を見た。
「そりゃどうも。また何かあったらいつでも直してやるよ。待ってるぜ、三郎」
「ありがとうございます。お世話になりました。失礼いたします」
五郎は強引に三郎に頭を下げさせると、三郎を連れて源三の家を出た。少し家から離れると、五郎はぴったり後についてくる三郎を振り返った。
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