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城に戻ると四郎が2人を出迎えた。
「お帰り。一郎さん待っとるで」
すると向こうから一郎がやって来た。
「五郎、ご苦労。三郎、訓練場に来い」
訓練場に着くと一郎は三郎に剣を渡すよう指示した。
「今からこれを振り下ろす。剣に記憶が残っていれば、あの龍が放たれる。幻には剣を溶かす力はない」
「えっ、でも……」
もう一度あの龍と戦えと言われた三郎は狼狽えたが、一郎は有無を言わさず場内に入り剣を振り下ろした。忘れていて欲しいと願ったが、自分を傷つけた龍を剣は覚えていた。大きな衝撃と共に場内奥にあの龍が現れると、一郎は三郎を場内に引き入れて剣を渡して外に出た。
「打て! 早くしないと来るぞ」
幻になった龍も、自分を殺した戦士を覚えていた。三郎を見付けると、龍は大きく地を揺らして突進してきた。三郎は思わず場外に逃げた。
「戻れ! 戦え!」
こんなにも巨大で醜悪な龍だったかと驚きながら、三郎は呆然と龍を見上げた。足がすくんで、前に出ることが出来ない。すると一郎が刀を構え場内に入り、龍に斬りかかった。
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