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そう言う四郎の頬も滑らかで心地よい。向かい合って頬を寄せたまま囁かれた三郎は、四郎の吐息にビクンと体を震わせると四郎の体を突き放した。
「止めろ!」
「痛っ、そんなに嫌がらんでも――うん?」
少し捲り上がった袖から突き出た三郎の腕に赤い色が見える。四郎は逃げた三郎を捕まえて腕を調べようとした。
「腕どうかした?」
「何でもない、放せ!」
「見せてみ。怪我して――え?」
三郎が慌てて袖を引き下ろす前に、四郎は赤い菊の花を目にした。
「三郎、おまえ……」
三郎は羞恥と動揺をかみ殺すようにキッと口を結ぶと剣を振り上げて場内に入った。今度はすぐに龍が現れたが、またあの沼の龍だった。三郎はもう恐れることなく一瞬で龍を片付けた。そのまま場内で剣を構えていると再び龍が現れたが、やはり同じ龍だった。その次も、何度倒しても出てくる龍は変わらなかった。
「こいつしか出ない設定にしたんやろか。だったらもうええんちゃう? 終わりにしようや」
しかし三郎は止めなかった。そしてまた同じ龍を倒した時、訓練場に一郎がやって来た。
「克服したようだな」
「お帰りなさいませ」
これで退屈から抜け出せると四郎は喜んで挨拶した。三郎は黙ったままだったが、剣を下ろして場外に出た。
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