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「沼の龍しか現れないのか?」
「そうなんですよ。三郎はもう何度も一撃で倒してるんですけどね。なんでですか?」
四郎の質問を受けた一郎は、三郎に向かって尋ねた。
「三郎、おまえにはあの龍が出続ける理由がわかるな?」
三郎は視線を避けるように俯くと、剣をギュッと握りしめて答えた。
「実戦だったら、また剣と相打ちだからでしょ」
「はあ、なるほど。えっじゃあなんぼ倒してもアカンやないか」
「そんなことない!」
頷き掛けて首を傾げた四郎を否定するように、三郎は叫んだ。
「もっと強い光で剣を完全に包むことが出来れば、直接触れずに龍を倒せる」
ようやく顔を上げて視線を合わせた三郎に向かって軽く頷くと、一郎は前に進み出た。
「ああ。だがもうその必要はない。次に倒すべき敵はこれだ」
そう言うと一郎は刀を振り下ろした。三郎と四郎は強い衝撃に備えて身構えたが、訓練場は静かなままだった。三郎は一郎のミスかと疑ったが、四郎は身を震わせた。
「ええっ、こんなに気配ないんですか?」
「いいから戦ってみろ。2人とも早く中に入れ」
2人が戸惑いながら場内に入ると、白い霧が辺りを包み始めた。
「背中を合わせろ。自分の前でだけ武器を使え」
一郎の指示に三郎は益々戸惑ったが、四郎はすぐに従い、三郎に説明した。
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