第8章 初めての喜び

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「昨日の話、聞いてたんだ」 「聞いてたんやなくて、聞こえたんや。あれだけ大きな声出したらお隣さんに筒抜けやって覚えとき」 そう言うと四郎は立ち上がって着物を着ようとした。その姿は夕べの次郎と重なって、三郎は思わず四郎の足首を掴んだ。 「帰るの?」 寝転んだまま見上げて尋ねる三郎に、四郎は手を止めた。 「なんや、添い寝して欲しいんか?」 四郎は冗談のつもりで返したが、三郎は目を逸らして頷いた。交わるのは自由だが眠る時は各自部屋に戻るのがケジメだと聞かされていた四郎は一瞬迷ったが、布団に戻り三郎に寄り添った。 (そっか、こいつ訓練場でデカイ狼に襲われたんやった) 残像とはいえ、相当の痛みと恐怖に襲われたに違いない。まして現実に襲われた次郎を思えば、なお胸が痛むことだろう。 「大丈夫や。新種だか何だか知らんけど、なんとかなるやろ」 「そうだといいけど。ねえ……」 「何や?」 「ううん。おやすみ」 こんな戦いを続けることに意味があるのだろうか 光を助けたいだけなら他に方法があるのではないか 誰かにぶつけたい疑問が頭の中に渦巻いていたが、口に出すのを思いとどまり、三郎は目を閉じた。
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