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斧じゃなくて剣で良かったと思いながら、三郎は素直に彼に従ったが、龍とどう戦えばいいのかわからない。とりあえず目の前に飛んできた尾に剣を振り下ろしてみたが、弾かれた。
「アホ、そんなとこ切ってもしゃーないやろ」
「じゃあ何処を狙えばいいんだよ!」
龍の体は硬いウロコに覆われていて何度剣を振るっても弾き返される。
焦り苛立つ三郎に、男は答えた。
「俺もよう知らんが、この辺りちゃうか?」
そう叫ぶと彼は振り向いて毒を吐こうとする龍の喉に向かって飛び掛かった。
そして振り下ろした斧は、見事に龍の喉を割った。
「下がれ!」
三郎に指示しながら、男は喉の奥へ一押しした斧を抜いた。
すると喉から異臭のする液体を流しながら龍の体は地に落ちたが、巨体が地と激突する衝撃はなく、龍の体は地に触れると同時に崩れていき瞬く間に地に飲み込まれるように消えた。
「はー」
斧を持った男は安堵のため息をついた。
何の活躍も出来なかった三郎は、龍が消えた場所を見詰めながら不機嫌な表情をしていた。
「何突っ立っとる。行くで」
男は割れた岩の間に入って行き、三郎は慌てて後を追った。
岩を包んでいた気味の悪い緑色の炎はもう消えていて、そこには闇へ続く階段があった。
龍が消えると同時に大分弱まったが、剣はまだ光っていて男の斧も同程度の光を放っていた。その光で足元を照らしながら、2人は階段を降りて行った。
進むにつれ、闇はどんどん深くなる。情けないことに、恐怖が心拍を上げて行く。
震えて足を滑らせないかとビクビクし始めた三郎に、暢気な声が届いた。
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