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三郎は、巻物の紐を解いてゆっくり開き始めた。どうやら書かれているのは文字ではなく絵のようで、豪華な着物を身に纏った人物の足元が出て来た。
「肖像画みたいやな。一郎さんの先祖のお殿様か?」
「これ殿様? なんか宗教画っぽくない?」
まるで後光が差しているような背景を見てそう言うと、三郎は巻物を最後まで開ききった。現れたのは端正な顔立ちの金髪の男性だった。
「外人? てかなんでこんなにキラキラ光ってる様に描かれて――」
「実際光ってるからや。ここ見てみ」
四郎は絵の横に書かれた文字を指差した。龍王と書かれている。
「龍の世界の王様ってこと?」
「ああ。これ身長やろ。7尺7寸て――2メートル33センチか。デカ!」
2人は黙って暫く絵を見詰めた。描かれた人物は大きいだけではない。逞しく威厳がある。そして美しい。
「俺等の先祖って、こいつと戦ったのかな」
「無理やろ。こんなん目の前に立たれたら神様にしか見えへんで」
幼なじみの光をさらった龍人は髪も目も唇も緑色だったが、龍王は金髪に青い目、桜色の唇をしていて表情も穏やかだ。ちっとも悪者には見えない。この絵を描いたのが人間だとすれば、友好関係にあったのかもしれない。
「この王様に人間界は独立させといて下さいて頼んで許して貰ったんちゃう?」
「それっていつの話?」
「千年くらい前やないか?」
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