第9章 美しい敵

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「ホンマや。一郎さんによう似とるわ。最上級の男前の顔やな」 「つうかなんか偉そうな感じが似てる」 「偉そうやなくて実際偉いんやろ。まあええわ。次行くで」 あくまで一郎に対抗しようとする三郎に呆れながら、四郎は巻物を元に戻した。 その後2人は古い年代の書かれた棚に収められた書物を調べて、龍王に関する記述を探した。千年前に書かれた文章は難解で三郎にはほとんど読めなかったが、所々に絵があった。人間が龍王に頭を下げている。 「やっぱ神様やな。離れていた筈の龍人の世界と人間界が繋がって、龍が人間界を荒らして困るから何とかして下さいて龍王様にお願いしに行ったらしい。そしたら壁で仕切ってくれはったけど、龍王様は世界の中心にいて一々こっちに構うてられへんから、仕切りが壊れてまた龍が抜け出したら自分達で何とかせいて言われたんやて」 「ほんとにそう書いてあるの?」 「俺も全部は読めへんけど、大体そんな感じや。親父から聞いた話とほぼ一緒やし」 「だいぶ違うだろ。ここに来た日に、ここは龍人が人間界を龍人界と繋げる為に作った場所だって言ったじゃないか。わざわざ繋げて龍を送り込んでるなら侵略だけど、今の話じゃ悪意はないみたいじゃないか」 「悪と戦う方がカッコイイからどこかで話変わったんちゃう? でもまあ一緒や。どのみち俺等は出て来た龍を倒せばいい。それだけの話や」 「やること一緒でも気持ちが違うだろ。正義の為に戦ってると思ってたら害獣駆除かよ。役場のおっさんの仕事じゃないか」 「せやから最初からそう言うてるやろ。龍を倒して穴塞いで帰るだけやって。考えてみい。俺等が牛育てて食うように龍育てて食うてる奴等やで。2メートル軽く越えてる巨人やで。本気で侵略仕掛けられたら勝てると思うか?」 「戦ってみなきゃわかんないだろ。見た目でビビるなんて、それでも戦士かよ」
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