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答えたのは次郎だった。三郎は、戸を開けた四郎について部屋に入った。次郎は起き上がっていて、五郎はその側に座っていた。
「次郎ちゃん、具合どうや?」
「休ませて頂いたお陰ですっかりよくなりました」
2人の顔を見てそう答えた後、次郎は尋ねた。
「一郎様はどちらに?」
「ああ……例の森に……」
「えっ、一人でか?」
五郎が険しい表情で尋ねると同時に、次郎は立ち上がり弓を手に取った。
「私達も参りましょう」
「次郎、まだ完全に治ったわけじゃ――」
「あの森は危険です。いくら一郎様でもお一人にしておくわけにはまいりません」
傷口はふさがっているが、次郎の喉にはまだ狼の爪痕が残っている。三郎は、それでも行こうとする次郎の腕を掴んだ。
「一郎は霧を払う技を習得したんだ。俺達は邪魔だって帰された。大丈夫だから放って置けよ」
しかし、それを聞いた次郎は呆れた顔をした。
「帰されたって……一緒に出掛けたのに一郎様を一人残して帰って来たということですか?」
「だって帰れって――」
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