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「言い訳は無用です。もういい。あなた方は残っていなさい。五郎、行きますよ」
「いやしかし、次郎――」
「一郎様がご不在の時は私がリーダーです」
きっぱりそう言うと、次郎は三郎の手を振り払って部屋を出た。その後を追おうとした五郎は立ち止まり、三郎と四郎を誘った。
「次郎はまだ完治していない。かといって一郎様も放っておけないから、おまえ達も来てくれ」
「ああ、そうやな。行くで、三郎」
三郎は唇を噛みしめて眉を顰めていたが、黙って皆について行った。早足で歩く次郎について行くと、すぐに森の入り口に着いた。森は、先程より濃い霧に覆われていた。
「一郎さん、見つかるかなあ。行き違いになったり……」
そう呟く四郎に背を向けたまま、次郎は森に向かって弓を構えた。放たれた矢は高く飛び、木々に刺さると光り輝き始めた。その光は霧を制し、森を照らした。
「スゲー……」
「行きますよ」
次郎は光の矢を放ちながら森を進んで行った。その凜とした後ろ姿を眺めながら、三郎は四郎に尋ねた。
「なあ、前から思ってたけど、次郎って何処から矢出してるの?」
次郎が手にしているのはいつも弓だけで、矢筒はない。矢は何処からともなく、弓を構えた瞬間に現れる。
「ああ……ようわからんけど、弓の戦士は何もない所から矢を作り出せるらしいで」
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