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「やっぱそうなの? スゲー!」
「シー、声がデカイわ」
相変わらず森は静かだ。無駄話の声に振り向いて怒られるかと思ったが、次郎は2人に構わずどんどん先に進んで行く。次郎は一郎のことで頭がいっぱいに違いない。三郎は胸を痛める思いから気を逸らそうと、話題を変えた。
「この森って、あの狼以外生き物いないの?」
「かつての森にはいたはずや。恐らくあの新種が生態系を乱したのやろ」
4人はすぐに四郎が木を切り倒した場所に辿り着いたが、白い狼も一郎もいなかった。
「一郎様はどちらの方向へ行かれましたか?」
「さあ……狼の子供が出て来たのはこっちやったから、多分……」
「憶測なら結構です」
冷たく答えると同時に、次郎は八方に矢を放ち、明かりを見比べた。
「光の弱い方向に進んでみましょう」
そう言うと次郎は僅かに光の弱い方向を見極めて再び歩き始めた。
「霧が濃くなったら直ちに五郎さんを囲んで円陣を組んで下さい。敵が見えてからでは間に合いません。素早く攻撃を繰り出し続けるのです」
今の自分達にはそれしか方法がないことは、昨日の訓練場でわかっている。しかし感で武器を振り回して当てることが出来るのだろうかと頼みの剣を眺めた三郎は、その変化に気付いて叫んだ。
「あれ? 光ってる!」
「ホンマや俺の斧も。残像でも倒したら記憶――」
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