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「戻って来たか」
淡々と刀を振るいながら、一郎は四郎に微笑み掛けた。特殊な強い布で作られているのに着物はボロボロで、所々に血がにじんでいる。
「すみませんでした!」
思わず一瞬手を止めた四郎は一郎に手を引かれた。一郎は四郎の背後にいた敵を斬り捨ててくれた。
「気を抜くな」
四郎はまたすみませんと詫びそうになったが、その前に斧を振るった。中心から見渡すともの凄い数の敵に囲まれている。とその時、上空で光が弾け、ついに次郎の矢に捕らえられた白い龍がその姿を現した。
「四郎、狼を頼む」
一郎は標的を龍に変え、天に向かって刀を振るった。矢のような光は龍の体をかすったが、続けて飛んで来た次郎の矢をかわして龍は飛び去ってしまい、一郎は舌打ちして標的を狼に戻した。
次郎も標的を狼に変え、全員で群れと戦ってようやく最後の一匹まで倒すと、一同は倒れ込むように五郎が用意した転送紋の中に入り城に戻った。
「ご苦労だった」
一郎はそれだけ言うと自室に向かった。部下の手前平気を装っていた一郎は、部屋に入って戸を閉めると同時にその場に倒れた。しかしその体は、床にぶつかる前に逞しい腕に抱き留められた。
「五郎……俺はいい。次郎は治ったのか?」
「今一番重症なのは、一郎様です」
一郎の寝所は布団ではなく、ベッドだ。五郎は一郎を抱き上げてベッドに運んだ。
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