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「そうではなくて……お気づきになりませんか?」
肩の傷を塞いだ五郎の手が背中に移動した。彼の大きな手は傷のない肌にも触れる。一郎はピクンと震えて背を逸らした。
「背中には触るな……」
「そういうわけには参りません。ご辛抱を」
触れられれば感じてしまう。どんなに律しようとしても無駄だ。一郎の背中にはたちまち桜の花が咲き始めた。それを初めて目にした五郎は思わず呟いた。
「これは見事な……」
一郎は声を殺すように枕に顔を押しつけたが、その性的興奮は五郎の質問の答えに気付かせた。
「あ……嫉妬か。三郎のやつ、本気で次郎に惚れてるのか?」
「三郎はまだ子供です。好きになっても本気にはならないなんて器用なことは出来ないでしょう」
それに次郎も。そう続けようとして、五郎は口を閉じた。一郎も気付いているにちがいないからだ。それは気付いてもどうしようもない事実だ。
「早く元の世界に帰してやらないといけないな」
「それが理由でしたか。三郎と四郎がいなくても戦えるか試したのですね。全くあなたって人は……」
背中の傷を塞いだ五郎は、再び一郎を仰向けにしてその瞳を見た。性的興奮に潤んだ瞳は、キラキラと揺れていた。
「でもあいつらに助けられた挙げ句、龍を逃がした。情けない。明日こそあの龍を片付ける」
「この体で明日も戦うおつもりですか?」
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