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「ああ。だからとっとと治してくれ。一番手っ取り早い方法で構わない」
一郎は微笑みかけながら五郎の頬に手を伸した。五郎はそれを振り払うつもりで手を重ねたが、触れ合った瞬間に気が変わり、一郎の手を握りしめて尋ねた。
「……本当によろしいのですか?」
「ああ。早くしろ」
手っ取り早い方法。すなわち体を交えること。
五郎はゴクリと唾を飲み込むと妖艶に微笑んだまま目を閉じた一郎に顔を近づけた。
「五郎兄……」
触れる瞬間に囁かれて五郎は思わず顔を離した。
「おい、止めろ!」
五郎が狼狽えて叫ぶと、一郎は目を開いて笑った。
実は、一郎と五郎は幼馴染みだ。一郎は一つ年上で体の大きな五郎を兄のように慕い、五郎は一郎を弟のように可愛がってきた。一郎は幼い頃からよく龍の夢を見ていて、それを五郎に話していたが、2人が龍と戦う運命にあり、その時には一郎の方がリーダーになるということを知らされたのは13年前、臥龍山の封印が破られた時だった。それでも2人はそれまで通りの関係を続けてきたが、ついに一郎の刀が覚醒した時に五郎は言った。
『これから俺はおまえに従う。こんなに大きな男が傅いていれば、おのずと他の戦士もおまえを敬い仕切り易くなるだろう』
以来五郎は一郎に敬語を使い部下として接してきたが、実の弟のように可愛いと思う気持ちは変わらない。五郎は困った顔をして一郎を眺めた。一郎はそんな五郎と目が合うと、笑うのを止めて横を向いた。
「すまない。やはり照れるな」
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