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「いいえ、全く」
答えたのは青い国の長、青龍だ。まだ戦士と遭遇していない青い龍の主で、肌は淡い水色、舌と唇はそれより濃い水色で、髪と瞳と爪は青い。
「だからとっとと殺しちまえばいいって言ってるんだ。あんな奴等を生け捕りにしてどうするんだ」
体長2メートルを超える雄の中でも一際逞しい雄が怒鳴った。黒い髪の後ろ姿はまるで人間のようだが、その肌は灰色だ。
「黒龍、まだ怒ってるのか」
「当たり前だろ。沼の底で大人しくしてたウチの子を引きずり上げて殺したんだぞ?」
「大事な子をあんな所にやるのが悪い」
「なんだと?」
戦士に殺された黒い龍の主である黒龍は、赤い髪の雄を睨んだ。一郎が倒した赤い龍の主、赤龍だ。赤い国の長である彼は瞳や唇も赤いが肌は桜色だ。
「戦士が来るのは初めからわかってただろ」
「ああ。だから龍王様は強い奴を置いておけって――」
「馬鹿正直に立派に育てた子を送り出すのが悪いって言ってるんだよ」
「貴様、やられるに決まってる弱い子を送り込んだのか。最低だな」
「俺が受けた命令は、戦士を全員誘い込むことだ。倒せと言われたわけじゃない。あの子にもそう伝えたのが悪かった。あんな小さな生き物だ、簡単に捕まえられると思ってしまっても無理はない。戦士の力を見くびっていた。一番強い子でも無事では済まなかっただろう。白龍の子みたいに自力で逃げ帰れる賢い子はウチにはいない」
赤龍がそう言いながら視線を合わせると白龍は自慢気に微笑み、黒龍は益々不機嫌になった。
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