第10章 龍を喰らう者

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「ふん。ちょっとやられたくらいで逃げ帰ってくるなんて甘やかし過ぎだ」 「指令を果たせない挙げ句に死ぬよりマシだよ」 「貴様、死んだ子を侮辱するのか?」 「喧嘩は止めましょう。内輪もめしている場合ではありません。次はどうするか、早く決めないと」 立ち上がった黒龍を宥めて青龍が話を本題に戻すと、機嫌を損ねた白龍が横を向いたまま言った。 「ウチの子はもう森へは行かせないからね。あそこは過去に破壊されたのを無理矢理再生させた森だ。あんな場所じゃ本来の力の半分も発揮出来ない。赤龍の谷も黒龍の沼もそうだっただろ。外で戦うのは不利だって。攻め入って来たら皆で取り押さえればいいじゃないか」 すると今まで黙っていた黄色い雄が叫んだ。 「それは困る。入って来るとしたら私の管轄区だ。勝手なことは言わないで頂きたい」 彼は一番人間界に近い場所にある黄色い国の長、黄龍(おうりゅう)だ。髪、爪、唇、舌が黄色で、瞳は茶色、肌はクリーム色をしている。 「待ち構えていて荒らされる前に捕獲すればいいじゃない」 「バカ言うな。このまま何もせずに攻め入ってくるのを待つなんて、龍王様がお許しになるわけがないだろう。第一、龍がいなくなれば彼奴らは帰ってしまうぞ」 「じゃあどうするんだよ」 「霧を強化してもう一度同じ作戦を試してみればいい」 「だからもうウチの子は送らないって言ってるだろ」 また喧嘩が始まる前に、青龍が割って入った。
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