第10章 龍を喰らう者

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「白龍の子は、もう許してあげましょうよ。ちゃんと映像も送ってくれたじゃないですか」 五色に仕切られてはいるが一つの丸い大きなテーブルの上には、白い龍の目から見た森の立体映像が浮かんでいる。今は静止しているが先程まで白い龍と戦士達の戦いの様子が中継されていて、龍人達はそれを観ていた。 それぞれ自分の色に相応しい豪華な衣装を身に纏った彼等は、龍人の世界では龍王に次ぐ権力者達で、王の命によりここに集まっている。王の命令とはすなわち、龍と龍人を脅かす4つの武器の破壊と特殊な能力を持つ戦士の捕獲だ。それを受けて沼と沼の龍で武器を破壊しようとしたが失敗し、戦士を霧で孤立させて1人ずつ拉致しようという今回の作戦も失敗してしまった。 「白龍、さっきの映像をもう一度見せてくれませんか? もう一度じっくり眺めたら、何か彼等の弱点を見つけられるかもしれません」 「いいよ」 白龍が長い腕を伸しテーブルの中央を指先でポンと叩くと、立体映像が動き始めた。高速で木々が流れ、上空から白い狼の群れを捕らえた所で大きくズームすると、一人で狼と戦う一郎の姿が現れた。周りを囲まれ一斉に攻撃を受けている。 「ここ長いから飛ばそうか」 「いや、待って下さい」 青龍は映像を先送りしようとした白龍の手を止めて、疑問を投げかけた。 「彼は何故一人で戦っていたのでしょう」 「それは話したじゃない。仲間と喧嘩したんだよ。一人になったからチャンスだと思って一気に攻めたのに、あと一歩の所で仲間が戻って来ちゃった」 他の龍人達に見せることが出来るのは今日白い龍の目を通して記録した映像だけだが、白龍は自分の森での出来事は全て知っていて青龍達に伝えていた。 「ええ。それは聞きましたが、彼はもっと慎重なタイプだと思っていたので……」
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