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怪訝そうに眉を顰め、青龍はじっと一郎を見詰めたが、戦う姿を見ていても答えは見つからなかった。
「霧を払う技を身につけて過信してたんじゃないの? ねえ、先進んでいい?」
「どうぞ」
白龍は、矢が飛んでくる所まで映像を進めると、次郎の姿を映し出した。すると黒龍が身を乗り出してため息をついた。
「こいつは綺麗だな。これなら生け捕りにしても使えそうだ」
「ああ、我らの妻のような容姿だな」
「皆さん、見惚れてないでちゃんと見て下さい。弓を引く手が震えていますね。前日に捕獲しそこねた戦士というのは、彼ですか?」
「そうだよ。華奢だから簡単に捕まえられると思ったんだけど、傷の治りも早いみたいだし意外とタフだったね」
「でもまだ治ったわけじゃない。怪我で休んでいたのに、無理をして出て来たようですね。別の戦士も見せて下さい」
白龍は映像を森全体に切り替えて三郎を探し出した。黒い龍にとどめを刺した三郎の顔がはっきり見えると、黒龍が唸った。
「このガキ……」
三郎は少し離れた場所に立ち時折霧を払う技を使うだけで、目の前の狼を斬ろうとしない。
「こいつ、どうしちまったんだ。あんなに無鉄砲に暴れ回ってたのに」
赤い谷での三郎を知っている赤龍が不思議そうに呟いた。
「確かに、赤龍の谷を破壊して黒龍の子を殺した戦士にしては大人しいですね」
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