第10章 龍を喰らう者

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議長を務めた青龍は、自分の城に戻ると白龍から貰った映像をもう一度眺めた。地理的に考えると、戦士が次にやってくるのは青龍の洞窟だ。そこでどうやって彼等を捕まえるか青龍が悩んでいると、妻がやって来た。 「まだお仕事?」 「ああ、どうも上手くいかなくて……」 青龍はそう言いつつ、妻を引き寄せ膝に抱き上げた。 青龍の妻、桔梗(ききょう)。龍の世界にも花は咲く。人間の世界に咲く花の全てが龍の世界にも咲くわけではないが、いくつか同じ種類の花があり、桔梗はその一つだ。青龍の妻は、その桔梗の花と同じ色の瞳を持つ中性の龍人だ。夫の影響で肌も髪も若干青みがかってはいるが、雄である夫とは違い、見た目は人間とほぼ同じだ。ただし、人間として人間界に連れて行ったら間違いなく此の世の者とは思えない程美しいと形容されることだろう。 机の上には、まだ白い森の映像が浮かんでいる。桔梗は、美しい青い瞳でその映像をじっと見詰めた。 「これが人間ですか。随分可愛らしいんですね」 青龍は、勘ぐるように振り返った桔梗の頬に口付けると、優しく答えた。 「そうだよ。この子達を捕まえなきゃいけないんだけど難しくてね。どうしたらいいと思う?」 すると桔梗は不思議そうに首を傾げた。 「捕まえればいいのなら転送紋をくぐらせてしまえばいいではないですか」 青龍は首を振り、映像の中で斧を構えた四郎を指さした。 「それは無理だ。ほら見て、武器なんて持っている。これで龍を殺すんだ。恐ろしく凶暴な奴等だよ。見た目は我らに似ているが、どちらかというと獣に近い」
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