第11章 甘い罠

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封印を終えて輝きを増した刀を確認して鞘に収めると、一郎は城とは別の方向に歩き出した。 「罠があるとすれば、青い洞窟だろう。洞窟に何か仕掛ける為に、龍の屍を使って我々を森で足止めしていたのかもしれない。だとすれば、早く調べた方がいい」 一郎は戦士達を率いて洞窟へ向かった。そしてその名の通り青く光る口を開いた洞窟の入り口に辿り着くと、立ち止まって振り返った。 「洞窟内は複雑に進化しているかもしれない。一歩一歩確認して先へ進む。決してはぐれるな。はぐれそうになったらすぐに叫べ」 注意を終えて一郎が洞窟に入ろうとすると、最後尾にいた五郎が前に出た。 「トラップがあったらすぐに助け出せるよう、一郎様の後ろにつかせていただきます」 「ああ、そうしてくれ。三郎、おまえは真ん中を歩け」 三郎は舌打ちしそうになったが、次郎と目が合い留まった。次郎が信用の薄い三郎のすぐ後ろにつき、一郎、五郎、三郎、次郎、四郎の順に洞窟に入った。洞窟内は青い光に照らされてはいるが、先へ進むほど暗くなり、鍾乳石のような柱が行く手を遮り道は細くうねっている。慎重に進んでいた一郎の目が、行く手に青黒い渦を捕らえた。 「来るぞ。五郎、端に避けろ」 一郎が刀を構えた時には、もうコウモリの大群が間近に迫っていた。耳障りな鳴き声が洞窟内に響き渡り、戦士達は思わず耳を塞いだ。 「なんやこの音」 「耳がやられる前に早く斬れ」 そう言いつつ先頭の一郎が大半始末してくれたので、最後尾の四郎の所まで飛んで来たのは数匹だった。その最後の数匹を斬り落とした時、四郎はコウモリの鳴き声以外の音を聞いた気がして振り返った。
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