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彼女も大きな瞳でじっと四郎を見詰めている。本当に可愛らしい。しばらく女性を見ていなかったせいか、尚更魅力的に見える。安心させようと武器を置いて微笑みかけた四郎に、彼女は可愛らしい声で囁いた。
「一緒に――」
「え、なんて?」
女は首を傾げている四郎の手を取ると、壁にペンダントをかざした。
「四郎、離れろ!」
五郎は四郎の体を掴もうとしたが、強い光に跳ね返された。一郎は刀で女からペンダントを奪うことに成功したが、ペンダントから出た光がしっかりと転送紋を刻んだ後だった。あっという間に、女は四郎を連れて転送紋の中に消えてしまった。後には次郎の矢に射貫かれた着物の片袖だけが残っていた。
「四郎……」
五郎は転送紋が消えた壁を叩いてその場に崩れた。一連の出来事を呆然と眺めていた三郎は、その姿を見てようやく我に返り、一郎に詰め寄った。
「早く追いかけようよ。それ使えば出来るんでしょ?」
「いや、恐らく無理だろう」
そう言いつつ、一郎はペンダントを調べてスイッチらしき場所を押してみた。すると壁に先程と同じ紋が浮かび上がった。
「出来たじゃん。さあ早く――うわっ!」
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