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三郎と光は幼馴染だ。共に18歳、高校3年生。
小学校から高校までずっと同じ学校に通ってきた、友達というより家族のような存在だ。
恥ずかしいことも、悔しいことも、沢山共有してきた。
今更隠すことなど何もないはずだ。なのに光は、険しい表情で叫んだ。
「帰って。ここは君が来る場所じゃない」
「帰るよ。おまえが何してるのか見せてくれたら」
光は唇を噛んで、困ったような悲しいような顔をした。
黙っている光に向かって、三郎は続けた。
「おまえ、最近また痩せただろ。ここでしてることと、関係あるんじゃないか?」
言い当てられた光は、ため息をつきながら背後の巨岩を振り返った。
丸裸の地の中央に聳え立つ、高さ2メートル、直径は1メートル以上ありそうな黒い岩だ。
とても硬そうに見えるが、中央には薄らと亀裂が入っている。
(もう少しだったのに……)
しかし三郎に知られるわけにいかない。光は諦めて山を降りることにした。
「光!」
三郎は、呼んでも無視して通り過ぎて行こうとする光の肩を掴んだ。
「そんなに俺に見られるのが嫌って一体――」
「触らないで!」
三郎の手を振り払おうとした光は、足を滑らせて転びかけ、逞しい腕に抱き留められた。
「危ないな、おまえ本当にどうかして――あれ?」
腕の中の光の体が熱い。顔を覗き込むと頬が真っ赤だった。
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