第2章 茶髪のイケメンと優しい巨漢

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「ああ、三郎、そいつを追いかけようとしてたんか」 「そうだよ。連れて行かれたんだ。光――幼馴染が」 この闇の果てに広がる世界。戦うことを運命付けられた場所。 そこに行くのは四郎も初めてだが、文献なら見せられた。遠い昔、闇の果てに平安をもたらして戻ったという戦士の記録だ。けれどきっと大げさに書かれているのだろうと思っていたし、正直龍だって信じていたわけではない。 ただ、斧は不思議に手になじみ、木や岩を相手に修行を積むのは楽しかったから現実に戦ってみるのも悪くはないとは思っていた。 そして龍は実在した。 とすると、他の記述も全て真実かもしれない。 龍を生み出し、育てて喰らうという龍人。三郎が見たというのは恐らくそれだろう。 「ウロコが光ってデカイ奴なら雄の龍人やろ。三郎、龍人ってどういう奴等か全く知らんの?」 振り返って尋ねると、三郎は頷いた。不機嫌な子供の表情だ。そんな彼に説明するべきか、四郎は迷った。 龍人には3つの性があると聞いている。 細かいウロコに覆われた巨大な雄、人間の女に似た雌、そして人間の男に似た中性。 正確に言えば似ているのではなく、人間はそもそも龍人の出来損ないだという。 不完全な中性と不完全な雌が人間の男女だと聞かされた時、四郎は不愉快に思った。そしてそれ以上に、完全な中性がどんなものかという説明は受け入れがたいものだった。 四郎は説明するのを止めて、話を変えた。 「三郎、真剣使うの初めてか?」 「うん。だって貰ったの今日だもん」 「はあ? 今日初めて握ったんか?」 「でも剣道ならスゲー練習して来たし、自信ある」
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