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一方、連れ去られた四郎は、自分の身に起こったことをまだ理解出来ていなかった。女に手を引かれて転送紋をくぐった先も青い洞窟だったが、振り返ってみると仲間の姿はなかった。
「えっ、どうなって……」
「こっちです」
戸惑う四郎の手を引いて、女はどんどん歩いて行く。女の身長は四郎とあまり変わらない。むしろ少し高いくらいだ。ヒールの高い靴を履いているのかと足元をみたが、そうではなかった。
「やっぱり君、龍人なんや。せやけど俺達の言葉話せるんやな」
「翻訳機がありますから」
女は振り返ると耳を指さしながら舌を出してみせた。よく見ると耳と舌にピアスのようなものがついている。
「えっそんな小さいのが? 凄いな」
「お持ちでないのですか?」
「はあ。持ってない言うか、初めて見ました」
四郎の返事を聞くと、女は立ち止まり耳から翻訳機を外した。
「こちらを差し上げます」
女はそう言うと、四郎の耳の目立たない場所に翻訳機をつけてくれた。
「話す方は使っていることがすぐばれるので止めておきましょう。言葉の意味がわかっていることも、気付かれないようにした方がいいかもしれません」
「気付かれないようにって、誰に?」
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