第11章 甘い罠

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「なんだ大人しいじゃないか。まだ子供か?」 「いや、これで成人だそうだ」 「で、食事させればいいのか?」 「ああ、そうだ」 部屋には身長2メートル越えで筋骨隆々の雄が5人いる。髪の長さと服は違うが、顔は皆同じに見える。きっちり整った精悍な顔立ちだが、淡い緑色に光る肌と真緑色の目と唇を持つ彼等は、美しいというより不気味だ。 その内の一人が、壁の中に手を突っ込みワインボトルのような物を取り出した。すると他の者達も次々と壁に手を入れ、今度はグラスを取り出した。ボトルを持った龍人が全てのグラスを赤い液体で満たすと、その内の一つが四郎に差し出された。 「乾杯」 龍人達は一気に赤い液体を飲み干した。四郎はその様子を眺めながら迷った。 (どないしよ。毒やなさそうだし、素直に飲むべきやろか?) グラスに鼻を近づけると、甘い香りがした。四郎は、恐る恐る一口飲んでみた。 「美味い」 甘酸っぱい果実の味、それに少しスパイシーな刺激もある。再び口をつけると止められなくなり一気に飲んでしまい、もう一杯飲みたいと思ったが空になったグラスはすぐに取り上げられてしまった。 「じゃあ、食事にしようか」 久しぶりに水以外のものを味わった四郎は龍のステーキでも出て来るかと期待したが、龍人達は壁から料理皿を取り出したりはしなかった。彼等はベッドに座っている四郎に群がり、着物を脱がせ始めた。食事の前に着替えるのだろうかと不思議に思ったが、裸にされただけで着替えはなかった。そして食べ物が差し出されることもなく、四郎はベッドに押し倒された。
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