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四郎は城の書庫で見た龍王の絵を思い出した。とても立派な人物に見えたが、あれは随分昔の絵だ。今の王とは全く違うかもしれない。
(俺を囮にして皆を呼び出して、揃った所で全員殺す気やろか)
そうだとしたら一郎達に申し訳ない。それに戦士が全員死んだら人間の世界はどうなるのだろうと考えると尚更自分の失態を悔やんだが、もう遅い。
何も出来ない。
絶望的な気持ちで俯いていると、龍人に手を握られた。
「大丈夫?」
青い瞳と目が合った。深く吸い込まれそうな美しい青だ。有無を言わせず人を斬り捨てるような野蛮な人種には見えない。少し安心した四郎は、青い龍人に興味を持ち始めた。
「あの……それであなたは俺の見張りですか?」
「いや。たまたま通りかかっただけ。失神してる子に群がってる奴等に何してるんだって聞いたら、兄の命令だって答えたけど止めさせた。ごめんね。君もしかして、男は初めてだった?」
男というのが龍人の雄を意味するなら初めてだ。しかし何と答えていいのかわからず黙って頷くと、青い龍人に顎を掴まれた。
「不思議な顔だ。変種の血がなせる技なのだろうが……なんというか、絶妙に崩れたバランスが可愛らしい」
見れば見る程端正な顔に覗き込まれて、ブサイクで可愛いと言われた四郎は複雑な気分になって目を逸らした。しかし龍人は益々顔を近づけて言った。
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