第12章 危険な賭

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第12章 危険な賭

城に戻った一郎達は、書庫で龍の世界の資料を探した。 「やはりこれ以上新しいものはないようですね」 「そうだな」 見つかったのはいずれも千年以上前の記録だった。それ以降、龍の世界に行った戦士はいないようだ。一郎はその中にあった古い地図を広げて見せた。 「これが龍人の世界、この端の小さな円が人間の世界、そして今いる場所がここだ」 「えっ、俺達の世界ってこの小さい所だけ?」 地図は一畳ほどの広さだが、人間の世界は右上の端にある溝を指さす一郎の手の下に隠れてしまった。 「縮尺が正確かどうかはわからないし、その後変化があったかもしれないが、龍人の世界の方が圧倒的に広いことは確かだ」 「こんなに広い上に転送紋で移動されたら、探し出すのは困難ですね……」 「いや、そうでもない。龍人の世界は厳格な階級社会だ。王が最高の権力者で、その下に特殊な龍を扱う雄達がいる。彼等の許可なしに下の者が勝手に動くことは考えられない。四郎がさらわれたのは青い洞窟で、さらった女も青い服を着ていた。青い龍を扱う雄、青龍の下部だろう。すなわち四郎は、青龍の城、もしくはその付近に監禁されていると考えられる」 一郎は、地図の中の青い線で囲まれた部分の中央に指を移動させた。地図には他に赤や黄色で囲まれた場所がある。それを見ていた三郎は、ふと思い出して尋ねた。 「青い龍を扱うやつが青いってことは、緑色のやつは緑の龍を扱うってこと?」 「そうだ」 「でもこの中に、緑の場所はないよ?」
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