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「緑色の龍はどこにでもいる。龍人の雄のほとんどは緑色だ」
三郎は幼なじみの光を連れ去った龍人を思い出していた。けれど彼が着ていた服の色は覚えていない。光のことは一先ず諦めて、三郎は四郎のことを尋ねた。
「あのペンダントの転送紋はこの青い場所の何処かに通じてるはずなんだろ? だったらあの紋の中に入ることさえ出来ればすぐに四郎を見付けられるよね」
しかし一郎は首を振った。
「簡単に入れる場所ではないかもしれないし、そもそも歩いて行ける程近いとは限らない」
「車盗むとか――」
「車なんてあるわけないやろ、転送紋使えば一瞬で移動出来るのに――と四郎なら突っ込むでしょうね」
「次郎、よせ」
「すみません」
色々わかってきたようで、結局話は進んでいない。珍しく五郎がため息をついて項垂れると、一郎は決心して一同に告げた。
「奴等の目的はわからないが、四郎をさらっただけで満足するとは思えない。また何か仕掛けてくるだろう。俺独りで洞窟に行って来る」
「一郎様、何をおっしゃるのですか」
「そうです。白い森で危険な目に遭われたばかりじゃないですか」
五郎と次郎は慌てたが、一郎は落ち着いて説明した。
「あちらの世界にさらわれたら、恐らく四郎と同じ、もしくは近い場所に監禁されるだろう。俺ならそこから抜けだし転送紋を使って四郎を連れて帰ることが出来る」
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