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実戦で使うのが初めてかという意味で尋ねた四郎は、握ったことすらなかったという三郎に呆れたが、すぐにそれも無理はないと納得した。
「まあなあ、剣はそう簡単に持ち歩けるもんやないしなあ。俺かてまさか本当に斧を龍に向かって振り下ろす日が来るとは思うてなかったわ」
「えっ、斧持ち歩いてたの?」
「ああ。木こりやからな」
「木こり?」
四郎の都会的なファッションからは想像出来なかった職業に、三郎は驚いた。
「バカにしとるのか? 木こりは男の中の男の仕事やで。斧上家は代々、木こりや」
三郎の父は道場主だったが、その道場は実家を離れて辿り着いた地で自ら開いたものだった。会ったこともない祖父がどんな職業だったかは知らないし、そもそも剣を使う職業なんてあるだろうかと考えて三郎は尋ねた。
「じゃあ剣崎家は侍だったの?」
「先祖の商売知らんのか? 何も説明されずに剣渡されたんか? それでよう来たな」
「説明なんてどうでもいいもん」
「ふーん。ほな止めるわ」
「それは嫌だ」
「なんやそれ」
呆れて振り返ってみると、暗闇で三郎の目が光って見えた。不安そうに潤んだその大きな目は可愛く見えて、四郎はフッと笑った。
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