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「だったら俺が――」
「五郎、おまえは目立つ。俺なら雌や中性に紛れられるかもしれない」
「いや、しかし――」
「一郎様、おやめ下さい。捕まったのは四郎の失態です。そのような危険を冒してまで助けに行く必要はございません。我々は今まで通り、龍と戦えば良いではないですか」
次郎は必死に引き留めたが、一郎は静かに首を振った。
「四郎の失態は俺の責任だ。それに次郎、おまえも気付いているだろう。恐らくただ龍を倒しても、この戦いは終わらない」
「どういうこと?」
問い掛ける三郎に向かって、一郎は珍しく微笑んだ。
「後で説明して貰え。俺は洞窟へ行く。お前達は俺が帰るまで城を出るな」
四郎に続いて一郎までいなくなってしまうかもしれない。そう思うと急に不安になって、三郎は叫んだ。
「失敗したらどうするの?」
立ち上がった一郎は一瞬止まったが、そのまま部屋を出て行こうとした。
「一郎様、お待ち下さ――!」
すがる次郎に峰打ちすると、一郎は気を失った次郎と刀を五郎に託した。
「本当に独りで行くのですか?」
「おまえだって、四郎を連れ戻したいだろう?」
四郎の名前を聞いて五郎が動揺した隙に、一郎は行ってしまった。
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