第12章 危険な賭

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三郎は、一郎の背中ではなく、倒れた次郎の方に気を取られていた。 「次郎、大丈夫? ねえ五郎、次郎を――うっ!?」 五郎は三郎のみぞおちを殴って気絶させてしまった。 「悪いな。眠っていてくれた方が、見張りが楽だ」 一郎を信じる覚悟をした五郎は、2人を両肩に担ぎ上げて扉のない部屋へ運んだ。暫くして気付いた三郎が起き上がると、先に意識が戻った次郎は黙って正座していた。 「――ここは?」 「隔離部屋です」 「えっ、どういうこと?」 畳と布団以外何もない部屋だ。三郎は立ち上がって四方の壁を叩いてみたが、出入り口は見つからなかった。 「閉じ込められたってこと? なんで?」 「信用されていないのでしょう。それとも……四郎の気分を味わってみろということかもしれません。私はさっき酷いことを言いましたから」 次郎は背筋を伸して正座したまま、ため息をついた。 「ああ……。あれは一郎を引き留めたくて言っただけで、四郎を助けなくてもいいって本気で思ってるわけじゃないでしょう?」 「さあ、どうでしょう」 表情を変えず、そっけなく次郎は答えた。三郎は部屋を調べることを諦めて、次郎の前に座った。 「四郎が嫌いなの? 確かにちょっと鬱陶しいことあるけど……あいつ次郎のこと好きだって言ってたよ」
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