第12章 危険な賭

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一方、独り城を出た一郎は、青い洞窟に辿り着いた。先程の場所までなら危険な敵に遭遇する確率は低いが、武器がないので万が一の時には逃げるしかない。一郎は慎重に足を進めた。次郎達には戦士を1人さらっただけでは満足しないだろうと言ったが、確信があるわけではない。また別の戦士を狙うにしても、同じ場所では仕掛けてこないかもしれない。でも城にじっとしてはいられなかったし、かと言って次郎が言うように四郎がいないまま今まで通り戦いを続ける気にもなれなかった。 四郎を助け出すまで城へは帰らない。そう覚悟した一郎は、女から奪ったペンダントを握りしめた。すると洞窟の奥で微かな音がした。 何かいる。更に慎重になって進んで行った一郎は、その何かを発見して目を見開いた。さっきの女だ。身を屈めて床を調べている。一郎はゆっくり近付いて彼女に声を掛けた。 「これを探しているのか?」 振り返った女は素早く立ち上がり、ペンダントを奪い返そうとした。 「返して欲しければ、おまえが俺から奪ったものを返せ」 耳の翻訳装置を四郎に渡してしまったままの女は一郎の言葉を理解したわけではないが、感で答えた。 「あなたの仲間は、男達が連れて行きました。私にはもう何処にいるのかわかりません。そのペンダントを渡して下さい。それはあなたのものでも私のものでもありません」 「ならばその持ち主に会わせろ」 今度は一郎が何を言っているのか見当がつかず女が黙っていると、一郎はペンダントのスイッチを入れて壁に転送紋を映し出した。連れていけと言っているらしいと理解した女は意外そうに目を見開いたが、それならむしろ歓迎だと、一郎の手を取り微笑んだ。
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