第12章 危険な賭

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可愛らしい笑顔を向けられても一郎は険しい表情を崩さずにいたが、それでは転送紋をくぐれない。一郎は目を閉じて四郎の笑顔を思い浮かべた。四郎に会いたい。それだけを念じた瞬間に、一郎の体は転送紋をくぐり抜け、洞窟から消えた。 そしてもう一つの青い洞窟から外へ出た一郎は、眼下に広がる青い風景を見た。初めて見るはずだが、何処か懐かしいような気がする。城にあった資料の中にはこんな絵はなかったし、何処で見たのだろうと考えていると、緑色の雄の龍人が近付いて来た。取り押さえられる覚悟をしたが、彼等は礼儀正しく挨拶してきた。 「何を言っているのかわからない」 一郎がそう言うと、彼等は翻訳機を一組差し出してきた。 「これは?」 龍人の身振りから耳と舌に付けるものらしいと判断した一郎は、指示通り翻訳機を身につけた。 「これでわかりますか?」 今度ははっきり何を言っているかわかった。一郎が頷くと、龍人は携帯端末のようなものを使って先程とは違う転送紋を描き出した。 「お嬢様、どうぞこちらへ」 案内した女はもう立ち去ってしまったし、目を合わせてそう言うのだから、お嬢様と言われているのは自分だ。一郎は一瞬眉を顰めたが、傅く龍人の横を通り抜け転送紋に入った。着いたのは先に四郎が連れ込まれたのと同じピンク色のベッドルームだった。 龍人は一郎にも赤い飲み物を勧めたが、それが強力な催淫効果のある赤い水のカクテルであることに気付いた一郎は受け取らなかった。
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