第12章 危険な賭

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よく見ると1人だけ服装の異なる龍人の言葉に、他の4人は渋々従った。4人が先程触った時には確かに壁だったはずの場所に入って行くのを見送って視線を戻すとさっきより近くに龍人の顔があった。端正な、しかし緑色の顔だ。 「あんたはいつも緑色の龍を食べてるのか?」 頬を撫でながら尋ねられた龍人は、不思議そうに答えた。 「もちろん。他の色の龍なんて、実際には見た事もない」 「そんなに貴重なのか?」 「ああ」 そんな話はどうでもいいと言うように一郎の服に手を掛けた龍人に抱きつくと見せかけて、一郎は絞め技を決めた。油断していた龍人は、抵抗する間もなく失神してしまった。一郎はその懐を探り、小さな装置を取り出した。ここに来る時に龍人が使った転送紋を映し出す装置だ。転送紋はそもそも龍人が生み出したもので、一郎達が使っているのはアナログだが、どうやら本場ではデジタルが主流らしい。 「これが履歴か?」 一郎は感で操作して、この龍人が最近使った転送紋を表示させることに成功した。感を研ぎ澄ませその中から一つ選び大きく壁に投影すると、一郎は転送紋に入って行った。
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