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「なんだ」
独り言に返事をされて驚いて振り返ると、そこに一郎が立っていた。
「ホ……ホンマにホントの一郎さん!?」
「おまえこそ本当に四郎なのか? その格好はなんだ」
「こ、これはですね――」
青龍の弟好みのストレートヘアにされて宝石をちりばめた豪華なドレスを身に纏った四郎は慌てたが、その様子を見た一郎は、四郎が変わったのは外見だけだと確認した。
「まあいい。帰るぞ」
「はい!」
四郎は、これで城に帰れると思ったが、一郎が四郎を連れて移動した先は龍人界にある方の青い洞窟だった。
「え、なんで――」
「この世界の外に通じる転送紋は、龍に守られる場所でしか使えない。紋が開いた瞬間に万が一何かが逆流してきても龍が片付けてくれるようにな」
「なるほど――って俺等龍の敵ですやん? 俺等が片付けられる危険性は――」
「ああ。戦士と認識されれば襲ってくるだろうな」
「ええっ、一郎さんも武器お持ちやないですよね?」
「ああ。逃げるしかない。もうしゃべるな」
大きな声で話している場合ではない。四郎は口を覆って一郎に寄り添った。一郎は壁に向かって紋を刻み始めたが、いつもと違って刀がないので上手くいかない。するとすぐに諦めて転送装置を取り出した。
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