第13章 囚われの戦士

4/9
前へ
/962ページ
次へ
四郎は吹き飛ばされた先にあった壁に急いで紋を刻んだが、振り返ると一郎はいなかった。龍を転送紋から引き離す為に囮になろうとしているようだ。 「一郎さん!」 「何をしてる、早く行け」 「いやでも――あ、そうか」 四郎は壁の色々な場所に手当たり次第に転送紋を刻んだ。 「もう充分だ、早く行け!」 自分が留まっている限り、一郎は逃げようとしない。そう気付いた四郎は、意を決して転送紋に入った。 四郎が転送紋に消えるのを確認すると、一郎も近くにある紋に入ろうとしたが、その前に龍の爪が転送紋ごと壁を破壊した。急いで別の転送紋に向かったが、龍の方が速い。しかも落下した瓦礫に逃げ道を塞がれ、追い詰められた一郎は、ついに龍の手に捕らえられた。龍は獲物を殺すのを楽しむように、ゆっくりと一郎の体を締め付けていく。それでも負けまいと一郎が龍を睨み付けていると、洞窟に威厳のある声が響いてきた。 「殺してはダメです。こちらに連れて来なさい」 死を免れた一郎の目に入ってきたのは、青く輝く巨大で美しい龍人だった。 「勝手に侵入した挙げ句私に挨拶もなく帰るとは、近頃の戦士は礼儀がなってないですね」 「貴様……青龍か――ック!」 擦れた声を絞り出した喉に青い光の輪が飛んで来て、一郎の首にピッタリはまった。一郎は反射的に首輪に手を伸したが、触れただけで電流のような刺激があり、外すどころか掴むことすら出来なかった。首輪がついたことを確認すると、龍は一郎の体を地に下ろした。
/962ページ

最初のコメントを投稿しよう!

227人が本棚に入れています
本棚に追加