第14章 逆鱗に触れる

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「向こうの世界で自分の顔を見なかったのか?」 「うん。そう言えば鏡なかったわ。身支度は勝手にされてたし」 そう言って四郎が眉を顰めると、鏡の中の四郎も眉を顰めた。でもそれは、四郎が知っている自分の顔ではない。 肌は元々色白で綺麗だったが、更に白く輝きを増している。眉は描いたように生えそろい、睫毛は以前より長く、瞳も少し大きくなっている。唇には全くシワがなく、グロスを塗ったようにプルプルしている。知らぬ間に化粧されたのかと思ったが、擦っても落ちない。 少しクセがあった筈の髪がサラサラストレートヘアに変えられたのは気付いていたが想像以上に女性的なカットだった。 「まるで女の子や。嫌やこんなん……」 「でも綺麗だ。顔だけじゃなくて全身この肌なのに気付かなかったのか?」 四郎の腕の、以前はほくろがあった場所を撫でながら五郎が尋ねた。 「ああ……やけに白く輝いて見えるのは照明のせいや思うてた」 「それより問題はこれだ」 五郎はそう言って四郎の髪をかき上げて見せた。そこにあるはずの戦士の証を見た四郎は、再び悲鳴を上げた。 「嘘や、なんで?」 証はある。けれど明らかに薄くなっている。肌質が変わったせいなのか、それとも―― 「五郎ちゃん、訓練場開けて」 「それは後だ。まず向こうで何があってこうなったのか、皆に説明してくれ」 斧に伸した四郎の手を握って立ち上がらせると、五郎は四郎を会議室に連れて行った。2人が部屋に入って行くと次郎は四郎を睨み付けた。
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