224人が本棚に入れています
本棚に追加
/962ページ
2人は光の穴に落ちた。そして確認する間もなく光は水に変わった。
「た、助けろ、溺れる!」
「無理、俺かて精一杯や!」
2人とも全く泳げないわけではない。しかし着衣のままだし、手には重い武器を持っている。
「と、とりあえず武器放せ」
「いや、でも!」
大事な武器だが、命を落としては意味がない。2人はジレンマに苦しみもがいていたが、やがて急に浮き上がった。
「大丈夫か?」
2人の背中は、そう問いかける大男に掴み上げられていた。
「ここ、そんなに深くないぞ」
「そりゃあんた大男やから――あ、ホンマや。斧、下についた」
そう聞いて三郎も腕を伸ばしてみると、剣先に鈍い手ごたえがあった。
水が濁っていてわからなかったが、どうやらここは、水深1メートル半くらいのようだ。
「まあ、俺が運んでやる。じっとしてな」
大男はそう言うと2人を抱えて力強く進み、岸に辿り着いた。
「助かったわ。あんた、一郎さん?」
「いや、俺はこういう者だ」
そう言って男は大きく胸元を開いた。そこには赤く大きな十文字があった。
最初のコメントを投稿しよう!