第14章 逆鱗に触れる

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「これは?」 「デジタルで転送紋を映し出す装置です。それのお陰で帰ってこれたんや」 次郎は装置を開いて暫し眺めた後、閉じて自分の懐にしまった。 「これは私が預かっておきます。お話はもう結構です。戦士の力が残っているか、訓練場で確かめてきなさい」 「はい。ホンマにすいませんでした。失礼します」 四郎が逃げるように部屋から出て行くと、次郎は転送装置を取り出した。記述を担当する次郎は、龍人語を話すことは出来ないが文字は多少読める。操作性に優れたその装置を理解するのは容易かった。 「一郎様……」 これを使えば一郎の元に行けるかもしれない。 もう何日も会っていない。 恋しい 留守を預かるのがサブリーダーの勤めだし、信じて待つべきだとわかってはいるが、耐え難い。一郎がいる世界に繋がる装置を思わずギュッと胸に抱くと、突然音が鳴り始めた。驚いて装置を見ると押すことを促すようにボタンが一つ光っている。 一郎かもしれない。 そう思った次郎は迷わずそれを押した。すると画面に一郎ではない顔が映し出された。それは青く途方もなく美しい顔だった。 『あれ? 牡丹じゃないね』 次郎が呆然としていると、画面からレーザーのような光が出始め、あっという間に次郎の目の前に人の姿を描き出した。顔だけでなく、全身が青く光っている。 「でも牡丹の仲間だね。私の話聞いてる? 青二(せいじ)って言うんだけど」
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