第14章 逆鱗に触れる

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今度は答えは返ってこなかった。青二はただじっと次郎を見詰めていて、次郎も青二を見詰めてじっと答えを待っていた。そして青二は言った。 「ねえ君、こっちに来てみない?」 「え?」 青二は、予想外の言葉に戸惑う次郎にそっと手を重ねた。 「龍王様から逃げるのは、私から逃げるのとはわけが違う。まあ不可能だろう。ここで待っていても、彼には永遠に会えないよ?」 胸の内を見透かされた次郎の心は揺れた。 「さあ、武器を離して今光っているボタンを押して」 罠かもしれない。それに今は戦士のリーダーである自分が、勝手にここを離れるわけにはいかない。次郎は葛藤しつつ弓を握りしめていた。と、その時廊下から声を掛けられた。 「次郎ちゃん」 四郎の声だ。青二も気付いてそちらの方を向いた。その瞬間、次郎は思わず弓を手放して転送装置のボタンを押してしまった。すると次郎の体は、青二の複製と共に消えた。 「次郎ちゃん?」 暫く待っても返事がなかったので、四郎はそっと扉を開けて中を覗き込んだ。さっきまで部屋にいたはずの次郎の姿がない。 「何処行きはったんやろ」
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