第14章 逆鱗に触れる

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「君が私の子を産んでくれれば、私はその子の目に映るものを見ることが出来るようになる。まるで目に翼が生えたように、見える世界が広がるということだ。つまり結婚してくれと言ってたんだよ」 「ええっ!?」 龍人の雄が子というのは龍のことだ。雄と結婚する龍人の中性が産むのは龍人ではなく龍だから。それは人間界にいる時に既に知っていたことだが、自分の体が中性と完全に同じになるとは知らなかった四郎は、青二の妻になることは考えても龍の母親になるなんて考えてもみなかった。龍を産むなんて恐ろしくて考えたくもない。四郎はプロポーズの言葉に軽々しく頷いてしまっていたことを反省した。 「す、すいません、そんな意味とは知らんかったんです。俺、無理です。ごめんなさい、結婚出来ません」 「そう……」 青二の愁いの表情に弱い四郎は顔を見ないように頭を下げ続けていたが、青二は四郎の顎を掴んで強制的に顔を上げさせて言った。 「なら頼みがある。妻にならないというなら、戦士として私を殺してくれ」 「それは――」 戦士に戻ることを選んで青二の元を去る時には迷いはなかったが、あの場に青二はいなかった。青二を目の前にして選べと言われると、四郎は迷った。 「惑わされるな四郎!」 五郎はそう叫んで2人を引き裂こうとしたが、青二がカッと目を見開くと殴られたように後ろに飛ばされた。 「五郎ちゃん!」 四郎は五郎を助け起そうとしたが、青二に強く手を引かれていてかなわなかった。
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