第14章 逆鱗に触れる

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五郎は四郎を抱きしめたまま倒れていた。 「五郎、しっかりして、五郎!」 大声で呼びかけても返事がない。四郎を助ける為に体力を使い切ってしまったようだ。 おかげで四郎の出血は止まり封印で一新された地に新たな血は流れていなかったが、こちらも意識が戻る気配はない。 三郎は恐る恐る2人の息と脈を確認した。幸いどちらも死んではいないようだ。 四郎なら抱きかかえて城に戻れるだろうと五郎を引き離そうとしてみたが、四郎を抱きしめた腕はしっかり組まれていて離れない。2人一緒に運ぶとしたら引きずって行くしかないが、それではまた四郎の傷口が開いてしまうかもしれない。 「でも、ここは安全なはずだよな……」 独り言が洞窟に響いた。 誰も答えてくれない。自分独りで判断するしかない。 選択肢は3つ。ここで2人を見守るか、独りで城に戻るか、独りで先へ進むかだ。 ここにいても何も出来ないし、城に戻っても大差ない。かといって独り先へ進むのは無謀だが、三郎は決心して立ち上がった。
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