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「皆死んじまったか?」
そう言われて三郎はハッとした。
あの洞窟を飛び出してきたのは独りでも先に進みたかったからではない。
――怖かった
何も出来ないまま、目の前で四郎と五郎が死んでいくのを見るのが怖かったからだ。恐怖を自覚した三郎は震え始め、源三にすがった。
「まだ生きてる。でもこのままじゃ死んじゃう。ねえ助けて。お願い、助けて!」
冗談のつもりで言った源三は驚いた。
「そう言われてもな」
「お願いです、何でもしますから」
三郎は源三に抱きついて潤んだ瞳で見上げた。
「おいおい、今更色仕掛けかよ」
「四郎は俺なんかよりずっと綺麗で可愛いです。助かったらきっと彼も御礼をしたいって言いますよ」
「え、マジか?」
「はい。とりあえず、一緒に来て下さい」
「仕方ねえな」
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