第15章 再会

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五郎はそう言って止まったが、三郎には何も聞こえなかった。しかし四郎は違った。 「ほんまや。人の声だ」 「ええ?」 自分にだけ聞こえないのが癪で、三郎は止まっている2人を追い抜いて前に進んだ。するとようやく、三郎の耳にも声が届いた。 「ありがとう。でも僕には食べられないから――」 人間の言葉。しかもよく知った声に、三郎は龍トカゲから飛び降りて走った。 「光!」 岩陰の向こう、少し広い平らな場所にいた金色の龍と美少年は、駆け寄ってきた三郎を見た。 「三郎?」 美少年はやはり光だった。彼は三郎に近付こうと立ち上がったが倒れてしまった。 「光!」 三郎が駆け寄る前に、光の体は金色の龍に受け止められた。 鋭い爪はなく、その手はまるで手袋をしているように金色の毛で覆われていた。体の大部分は鱗に覆われているが、頭や尻尾の先にも獅子のように毛が生えている。体が小さいこともあり今まで見てきた龍に比べると可愛らしく、後ろ足で立ち上がった姿は人間が入った着ぐるみのように見えた。 三郎を追ってやってきた四郎と五郎は龍トカゲに乗ったままだったが、金の龍は襲いかかることなく、光を抱いて大人しくしていた。そして三郎が近付くと、龍はそっと光の体を三郎に預けてくれた。 「光……」 三郎は幼馴染みの名を呼んで抱きしめた。光はただ黙って三郎の背に腕を回した。
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