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「ちょっと待て」
五郎は2人に背を向けて、ついさっき2人が落ちて来た場所を見上げた。
闇へ続く光のトンネル。思ったより距離がある。下から見上げると、まるで太陽だ。
どうやって戻るのだろうという疑問を、三郎は噛み殺した。
「おまえらを案内するのはついでだ。俺の仕事は――」
五郎はそこまで告げると目を閉じて深呼吸した。その一瞬で、周囲の空気が研ぎ澄まされた。
五郎は胸の前で手を合わせ一心に何か唱え続けた後、カッと目を見開くと同時に上空の光に向かって両手を突き出した。するとドンッと大きな音がして、光が消えた。
3人が立っている場所はそれで暗闇になったわけではなかったが、夕暮れ時の明りのない室内のように薄暗くなった。
「ええ? 穴塞いだ?」
「ああ。戦士は全員揃った。龍が抜け出さないように封印して来いという一郎様の命令で来た」
「え、一郎さん、もうおるのか?」
「ああ。おまえ達が最後だ」
「なあ、一郎さんて、どんな男や?」
「会えばわかる。俺は人の噂話は嫌いだ」
「ふーん」
四郎は五郎の答えを聞くと、三郎に耳打ちした。
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